コラム

ジョブ型雇用が日本でも普及する?生き残るためのポイントを解説!

2023.01.23転職・就職 Loadingいいね

大手企業を中心として、ジョブ型雇用を導入する国内企業が近年増えつつあります。メンバーシップ型雇用に続く雇用制度として、制度の概要を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

この記事では、日本でジョブ型雇用が注目を集めている理由、主流になっているメンバーシップ型雇用から移行するメリット、デメリットについて解説します。ジョブ型雇用が導入された企業で活躍するポイントも合わせて紹介しているので、当記事を参考にしていただければ幸いです。

 

ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用は欧米企業を中心として導入されているシステムで、日本では2018年頃から推進されている働き方です。
企業の要求に応じたスキルを持つ人を募集し、担当する職務範囲、雇用条件などを明確化した状態で雇用契約を結ぶことがジョブ型雇用の概要になっています。応募条件に見合った技能、スキルの高さが重視されており、成果に応じて給与が決まってくることが特徴です。
ジョブ型雇用の特徴として、従業員は職務記述書(ジョブディスクリプション)の内容に従って仕事を行うという点があります。職務記述書は従業員の職務内容、必要なスキルなどが記載された書類です。企業が応募者に要求するパフォーマンスを明確に規定することで、採用活動の効率化が見込めるようになっています。

一方、日本で主流になっているメンバーシップ型雇用は、長期雇用を前提として雇用契約を結ぶシステムです。1人の従業員に対してさまざまな職務をローテーションで割り当てて、長期的に活躍できる人材を育成することがメンバーシップ型雇用の主な目的になっています。

 

ジョブ型雇用が注目される理由と背景

日本ではメンバーシップ型雇用が主流となっていますが、近年では大手企業を中心としてジョブ型雇用を導入する国内企業が増加しています。
国内でジョブ型雇用が推進される理由、背景について紹介します。

 

新卒一括採用・終身雇用制度の限界

現代では複数の業界でグローバル化が進んでおり、同業他社との差別化を図るために専門性の高い人材が必要とされている状況です。
メンバーシップ型雇用の特徴である新卒一括採用、終身雇用制度は総合職(ゼネラリスト)の育成に適した仕組みであり、各分野に特化した専門職(スペシャリスト)の採用、育成が困難になっている面があります。年功序列による給与体系を導入している企業では、勤続年数が少ない専門職に対して適切な雇用条件を提示することが困難であるという問題もあります。

一方で、ジョブ型雇用は中途採用をメインとして、就業に必要なスキル、実務経験の有無を重視する採用方法です。職務内容と成果に応じて従業員の評価を行うことで、企業の生産性向上を図る仕組みとしてジョブ型雇用が注目されています。

 

テレワークなど働き方の変化

日本では2020年4月に緊急事態宣言が発令された時期に、テレワークや在宅勤務などの働き方を導入する企業が大幅に増加しました。総務省の「令和3年版 情報通信白書」によると、企業のテレワーク実施率は1回目の緊急事態宣言の前後で17.5%から56.4%まで上昇しています。

テレワーク、在宅勤務などの働き方では従業員の勤務実態を把握しづらく、メンバーシップ型雇用の評価基準では従業員に対して適切な評価を行いづらいことが問題になるリスクが高いです。

一方で、ジョブ型雇用では担当する業務内容の難易度、作業量などの指標に応じて給与評価を行うことが一般的です。成果を上げた従業員に適切な評価が行えることから、テレワーク、在宅勤務の拡大に伴ってジョブ型雇用に注目する企業が増えていると考えられます。

 

専門職の人材不足

近年ではAI技術の導入、IoT化といったIT分野に注力する企業が増えており、将来的にIT人材が不足することが予想されている状況です。経済産業省の「AI人材育成の取組」によると、2030年にはIT人材が約79万人不足すると予測されています。

若手IT人材の不足を解消する手段として、専門性の高い人材採用、育成を進めやすい仕組みを持つジョブ型雇用が注目されています。人手不足が進む状況で専門職を採用するには、職務内容、雇用条件などを明確化して求人募集を行うことが重要になります。ジョブ型雇用では職務内容、雇用条件などを記載した職務記述書を作成する必要があるので、職務内容を明確化した状態で求人募集が行えます。

 

多様な人材を確保する必要性

企業として複数の分野で高いパフォーマンスを発揮するには、各分野に特化した人材を募集、採用する必要性が生じます。近年では業務のIT化、働き方改革などの施策によって働き方の多様化が進んでおり、業務内容の細分化、固定が行いやすいジョブ型雇用が注目されている状況です。

日本でジョブ型雇用が注目された出来事として、経団連が2020年1月にジョブ型雇用の拡張を提案したことがあげられます。短期集中での新卒一括採用では能力を充分に確認できないとして、通年で採用を行うジョブ型雇用への移行を提言した背景があります。
また、海外ではジョブ型雇用が主流になっている地域があることから、海外拠点での採用活動ではジョブ型雇用の導入によって成果が上がりやすくなることが考えられます。

 

ジョブ型雇用の企業のメリット

人材不足、働き方の変化などの時代背景に合わせた採用方法として、ジョブ型雇用を導入する企業は近年増えつつあります。
ここでは、ジョブ型雇用の導入によって企業が得られるメリットについて紹介します。

 

専門人材を確保できる

ジョブ型雇用では従業員ごとの職務範囲を明確化して募集を行うので、採用後は専門性の高い業務に集中しやすいシステムになっています。採用後の部署異動、転勤などは基本的に行わないことがジョブ型採用の特徴で、自社にとって必要なスキルを持った人材を募集するのに適した手法といえます。事業拡大や新事業の立ち上げなどで専門職が必要になった際に、必要なスキルを持った人材を任意のタイミングで募集できることが、ジョブ型雇用を導入する主なメリットのひとつです。

 

即戦力人材を採りやすい

ジョブ型雇用を導入している企業では、自社が指定する業務に対応できるスキルを備えていることを重要視して採用活動を行うことが一般的です。依頼する業務内容に応じて給与、勤務時間などの条件を設定することで、専門性の高い即戦力人材を採用しやすくなる効果が見込めます。

ジョブ型雇用は時期に関わらず求人募集を行う手法であり、必要なタイミングで即戦力人材を募集できる点がメリットとしてあげられます。例えば事業拡大で人手が不足した場合、必要なスキルを持った人材を新卒、中途を問わずに募集できることが、ジョブ型雇用を導入している企業の強みです。

 

生産性を上げられる

ジョブ型雇用の導入を推進している企業では、従業員ごとに担当業務が明確化されている職場環境を構築できます。成果に基づいて従業員を評価するシステムを構築することで、従業員のモチベーションおよび生産性向上が見込めます。ジョブ型雇用は専門性が高い人材を育成するのに適した採用方法で、スペシャリスト志向の従業員が働きやすい職場環境を構築できることが特徴です。

 

ジョブ型雇用の企業のデメリット

専門性が高い人材の採用、育成を行う上で、ジョブ型雇用は複数のメリットがある手法です。
一方で、雇用条件を固定することで生じる問題、デメリットも存在します。

 

人材が他社に流出されやすい

ジョブ型雇用を導入している企業では、雇用契約を結んだ後に勤務条件を変更することは原則としてできない仕組みになっています。自社より好条件の求人募集が行われていたり、従業員が職場に対して不満を持っていたりする場合には転職、退職といった対応を取られるリスクが高くなります。

雇用契約を結んだ後に勤務条件の変更を行うには職務記述書の更新が必要であり、更新を行うには従業員の合意が必要になります。ジョブ型雇用の企業に応募する求職者は職務内容、評価基準などを見て応募するパターンが一般的です。ジョブ型雇用を導入している企業では,他社からの引き抜き、短期間での退職などの問題が生じやすくなるリスクがあります。

 

帰属意識が低くなる

ジョブ型雇用の企業に応募する人は雇用条件が決め手になっているパターンが一般的です。契約内容によっては他の従業員と関わる機会が少なく、部署単位で連携する、自社に貢献するなどの意識が高まりづらくなります。職務記述書に記載されていない業務は契約上行えないことから、他の従業員と連携する機会が少なくなる点もジョブ型雇用のデメリットのひとつです。
ジョブ型雇用で入社した従業員をチームに組み込む場合、他の従業員と連携できるように職務記述書の内容を調整することで、チーム単位で業務効率の向上が見込めます。

 

配置転換などが難しい

ジョブ型雇用では、雇用した人材の配置転換や職務内容変更などを行うには従業員による合意、契約更新が必要です。職務記述書に記載されていない業務に従事させることに従業員が合意し、職務記述書の更新手続きを行わなければなりません。ジョブ型雇用は専門職を募集するのに適している一方で、部署異動、配置転換などを前提とした総合職の育成には適さない問題があります。

 

ジョブ型雇用の求職者のメリット

専門性がある知識、スキルを持つ人にとって、ジョブ型雇用の導入が進むことは就職、転職活動を進める上でさまざまなメリットがあります。ジョブ型雇用の推進によって求職者にどういったメリットがあるかを紹介します。

 

自分の専門スキルを高めやすい

専門性の高い業務を継続的に行えるので、特定のスキルを高めやすい環境で仕事できるようになっています。ジョブ型雇用は専門職の募集に適した採用方法であり、得意分野を集中的に伸ばせることは専門職の人にとって大きなメリットのひとつです。採用後の昇進、転勤などは基本的に無いので、スペシャリスト志向の求職者にとってジョブ型雇用は活躍の場を探しやすくなるシステムであると考えられます。

 

多様な働き方ができる

ジョブ型雇用を導入している企業は成果主義であることが一般的なので、リモートワーク、テレワークといった非対面での働き方でも公平な評価を受けやすい仕組みになっています。ジョブ型雇用では従業員ごとに業務範囲が明確化されているので、従業員が個別に働きやすいというメリットがあります。

 

成果次第で高収入も狙える

ジョブ型雇用では業務成果が重視されやすく、業務の難易度や作業量などに応じて給与評価が決まることが一般的です。高度な業務を担当したり、高いパフォーマンスを発揮したりすることで収入増加が見込める企業である場合、業務に対するモチベーション向上、パフォーマンス向上を目的としたスキルアップの促進などが見込めます。

 

ジョブ型雇用の求職者のデメリット

ジョブ型雇用に合わせた評価制度が整っている企業は、専門性のある仕事に集中できる、成果に応じて収入増加が見込めるなど、求職者に取っては様々なメリットがある環境です。一方で、行える業務が制限されやすい、部署異動や転勤が制限されているといった仕組みがデメリットになる場合があります。

 

他の業務に回りにくい

ジョブ型雇用で入社した従業員は、基本的には職務記述書に記載されている業務が終了した時点で雇用契約が終了します。ジョブ型雇用で入社した従業員は業務経験のある分野が偏っており、部署異動や転勤などに対応しづらい問題があります。雇用契約を継続することが困難である場合、契約時の業務が終了した時点で退職、離職などの対応が必要になることが考えられます。

 

常にスキルアップの努力が必要

ジョブ型雇用では専門職の募集が行われることが一般的で、メンバーシップ型雇用と比較して採用ハードルが高くなる傾向があります。スキルの高さや作業量などが重視される企業に就職した場合、継続的に就業するには常にスキルアップに向けた努力、自己研鑽が必要です。業務内容の変化、ノルマ向上などによって要求されるスキル、パフォーマンスを発揮することが困難になった場合、企業側から解雇、退職などを提案されるリスクが高くなります。

 

失業のリスクがある

ジョブ型雇用を導入している企業に就職した場合、実務経験のある分野が偏っていることで転職活動が難航するリスクがあります。
株式会社パーソル総合研究所が2020年末から2021年初に実施した調査によると、従業員300人以上の日本企業において、ジョブ型人事制度を導入している企業の割合は18%、導入を検討している企業の割合は39.6%です。調査時点でジョブ型雇用を導入している企業は2割未満であることから、退職後に続けてジョブ型雇用の企業へ転職することは困難であると考えられます。

 

まとめ

専門職の人材不足は今後とも続くことが予想されており、対応策としてジョブ型雇用を開始する国内企業が増えつつあります。企業が必要とする人材を任意のタイミングで募集、採用できるジョブ型雇用の仕組みは、スペシャリスト志向の求職者にとってもさまざまなメリットがあると考えられています。しかし、メンバーシップ型雇用から移行する場合には募集する職務内容、雇用条件などを充分に検討する必要性が生じます。新規導入を検討する際には、ジョブ型雇用の仕組み、メリット・デメリットを適切に理解することから着手することをおすすめします。